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愛妻物語・寿美子抄

寿美子との出会い



「おーい!」
「隣のクラスにいい娘(こ)が入ってきたぞ〜〜〜!!」

女癖の余り良くないことで定評のA君が叫んでいる。

「次の休み時間には皆で見に行こうよ!」

と言う声に連れられて3〜4人の男に混じって僕はゾロゾロと隣のクラスを覗きにいった。

とその瞬間、僕の脳の奥でピカリと稲妻が走るのを感じた。
A君は手馴れた様子でお目当ての娘にしきりに話し掛けている。

「皆に紹介するからこっちへおいでよ!」と言いながらA君は彼女の紹介を始めた。

その娘はSueと言う名で派手な身振りで初対面の男供に物怖じもせずに愛嬌を振りまいていた。
Sueはドキッとするくらい派手な顔立ちで、服装も華美で肉感的なボディーに洗練された会話で、遊びなれた大人の雰囲気を持っていた
この学校はロスアンゼルスの中心部にある外国人のための語学学校でイタリア、フランス、スペイン、メキシコをはじめアラブ諸国、アジア各国からの生徒が多かった。
この日以来、僕は恋の病に罹ったようで、Sueのあの流れるようなボディーの仕草や洗練された視線の動きに夢中になってしまった。
A君は相変わらずSueに気軽に話し掛けて談笑しているが、不思議と僕にはそれが出来ないのだ。
  Sueに会うと、手足がすくんで気軽に話が出来ないのだ。

或る日、A君がどんな風に話をつけたのか、僕には不思議でならないのだが 「Sueのアパートへ遊びに行く約束を取り付けたので一緒に遊びに行かないか?」
と誘いを受けた。 そして、彼女は西瓜とアイスクリームが大好物だから、それらを必ず調達 してくるようとの指示であった。
「お安い御用!」
西瓜とアイスクリームで彼女のアパートへ行けるのならこんな良い話はめったにあるものではないぞ!、この時ばかりは、A君に心の中で手を合わせた。
アメリカの西瓜は日本の西瓜のように丸くはなくて、アメリカンフットボールのような形をした長方形の西瓜を左の小脇に抱え、右手にはアイスクリームを3人前ぶら下げてアパートを訪問したのである。 持参した手土産を見た瞬間、Sueは「あらァ〜! うれしい〜〜!」と言って、謝意を込めて 僕の肩を抱きすくめたのです。
Sueの表現は少々オーバーに感じたがアメリカではHuggingは日常的な行為であるらしい。
彼女の胸が当たった僕の右肩は暫くの間、火照りが納まらなかったのを憶えている。
Sueは野菜とカリフォルニアのフルーツをふんだんに盛り付けたサラダと美味絶品のフレンチトーストで我々を迎えてくれた。
このフレンチトーストと言う料理は日本にいた時には、お目にかかったことのない料理で、この時以来、Sueが僕を未知の世界に導いてくれる精霊のように見えてきたのだ。
今でも、自分でフレンチトーストを作ると初デートのロスアンゼルスのアパートの情景が瞼の奥に浮かんでくるのである。

ビバリーヒルズの豪邸をバックに借景

語学学校主催の小旅行でクラスメイトと


しばらくして、Sueはニューヨークへ向けて旅立った。
僕の心の中にポッカリと大きな穴があいてしまい、勉強も、仕事も手につかない状態に陥ってしまいました。
ニューヨークではロッキー青木が焼肉レストラン”紅花”を五番街にオープンして間もない頃で猫の手も借りたい状態だったのです。Sueの渡米先のスポンサーはロッキーのお母さんで、断りきれない事情があったようでした。
社交的なSueはここで当時、指揮者としては苦学生時代の小沢征爾、江戸京子、フランク・シナトラ等と知り合い、彼等の家に遊びに行くほど懇意な関係になりました。
僕の不安は派手な交際と目立つ風貌、洗練された身のこなし、明るい性格のSueと全く対極にある自分との交際は果たして本気なのだろうか?と言うことでした。
このままニューヨークから帰らずに、僕を見限るのではないだろうか? 不安が不安を呼び、それが日毎に増殖して、頂点に達した頃、僕はニューヨーク行きを決断したのです。


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寿美子との出会い  子育ての時代 子離れの時代 被爆の影響? 老後を考える時代



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